想うのはあなたひとり―彼岸花―
「自殺したように言ってくれと頼まれたんだ。椿くんから…」
「え…」
「僕も最初は首を縦には振らなかった。そんなのは良くないと思ったから。でも…」
保科さんは真っ直ぐ私を見つめ、当時のことを鮮明に話してくれた。
「椿くんはどうしても妃菜子ちゃんに幸せになってもらいたかったから、嘘をついたんだ。そしたら妃菜子ちゃんが素直に行動するからって…椿くんはいつも妃菜子ちゃんのことを考えていた。そうして欲しいって一時間も説得されて…僕は折れたんだ。あんなにも必死な椿くんを見ていたら…断れなかった」
椿は…自殺したんじゃないの?
今も生きているの?
そう嘘をついたのは全部私のため?
それは本当なの?
あなたはこの空の下で生きているの?
自然と涙が零れる。
私は何も言えません。
でも生きていると知れたのなら、私はそれだけで十分です。