想うのはあなたひとり―彼岸花―

秋風が私を包み込む。
濡れた頬を乾かしてくれる。


あなたが生きていると知って、私の胸が少しだけ軽くなった。


笑みが溢れる。
あなたもこのオレンジ色の空を見ていますか?





「カーラスーなぜ鳴くのーカラスはやーまーにー」




隣では元気に歌う紫音。
今日保育園で教えてもらった唄なんだって。
さっき自慢されちゃった。
小さな手を握って、あの河川敷を歩く。



彼岸花はちゃんと咲いていた。赤い色の彼岸花は今日も空を見上げて強く咲いていた。






…彼岸花の花言葉を知ってる?




想うのはあなた一人。





ううん、違うの。
まだ他の意味があるの。








それは、再会。









「ママ!あそこに絵描きさんがいるよー!!」






そう言って私の手を離し思いきり走る紫音。
紫音の視線の先にはキャンパスを広げ、あるものを見つめる男の人がいた。





彼の見つめる先にはあの花。






真っ赤に染まる彼岸花。






< 381 / 385 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop