想うのはあなたひとり―彼岸花―
秋風が私を包み込む。
濡れた頬を乾かしてくれる。
あなたが生きていると知って、私の胸が少しだけ軽くなった。
笑みが溢れる。
あなたもこのオレンジ色の空を見ていますか?
「カーラスーなぜ鳴くのーカラスはやーまーにー」
隣では元気に歌う紫音。
今日保育園で教えてもらった唄なんだって。
さっき自慢されちゃった。
小さな手を握って、あの河川敷を歩く。
彼岸花はちゃんと咲いていた。赤い色の彼岸花は今日も空を見上げて強く咲いていた。
…彼岸花の花言葉を知ってる?
想うのはあなた一人。
ううん、違うの。
まだ他の意味があるの。
それは、再会。
「ママ!あそこに絵描きさんがいるよー!!」
そう言って私の手を離し思いきり走る紫音。
紫音の視線の先にはキャンパスを広げ、あるものを見つめる男の人がいた。
彼の見つめる先にはあの花。
真っ赤に染まる彼岸花。