想うのはあなたひとり―彼岸花―


私は彼をずっと見つめいた。









神様、私はあなたに好かれたいです。







一歩一歩、近づいていく。






「お兄さん、何を描いているのぉ?」






「ん?僕の大好きなお花だよ。彼岸花っていうんだ。」






また、あなたと逢えたら…約束を果たすから。






「ひがんば…な?綺麗なお花だね!ママーママも見てー!」





紫音が小さい手で手招きをする。
可愛い息子のためなら行かなくちゃ母親失格でしょう?


私は唇をぎゅっと噛みしめ、紫音のいる場所に近づいた。





やはり…あなたなのね。







「ママ、お兄さん上手だねー」





「そうね…」






「良かったらこの絵もらってくれませんか?もう少ししたら完成なんです。ちょっと待っていてくださいね」






そう言って彼はキャンパスを裏返し、何かを書いた。そして立ち上がり私にそれを渡した。





その瞬間、緩んでいた涙腺が切れたの。
目の前にはあなたがいた。





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