想うのはあなたひとり―彼岸花―
「椿くんにでも頼めばいいでしょ?」
また椿に頼むの?
椿も同じ歳なのに?
いつもそうじゃない。
中学三年生に見えない大人っぽい椿を利用して、自分のワガママを通して。
もう椿を巻き込むのは嫌。
「もうやめよ?お母さん。私、前みたいに笑って暮らしたいよ…」
とろんとした目で母親が私を見下ろした。
その次の瞬間、不気味に笑ったのだ。
「何言ってるの?まだお前の頭ん中にはあの人がいるみたいね」
私は歯を食い縛る。
飛んできた拳。
その反動で体が勢いよく倒れた。
しばらくしてから痛さがやってくる。
頬に母親の拳が入ったのだ。
「いいから早く買ってきなさい!!!」
どこまでも響く怒鳴り声。
震える体を抱えて、私は家を飛び出した。
もう嫌だよ、ここから逃げたいよ。
助けて、椿。