想うのはあなたひとり―彼岸花―
私はいつも椿に頼ってばかりだった。
悲しくて、苦しくて、誰かの温もりを感じたくて椿を頼っていた。
小さくて、醜い私を椿はいつも笑顔で迎え入れてくれる。
そういう甘えが零れ落ちたのだ。
真っ赤な血がぽたぽたとフローリングの床に落ちていくように。
まだ夏が終わって間もない季節。
一歩外を出ると、少しだけ肌寒く感じる。
半袖の私は、ぶるっと体を震わせた。
「まだ明るい…」
今は何時だろう?
家の時計は壊れてしまい、動いていない。
しかも家はカーテンで閉められているから、太陽の動きがわからないのだ。
滅多に外に出ない私は、今何時だとか、今の天気だとかは、カーテンを開けないと確認できない。
そう、ずっと夜。
あたしの時間はずっと前から止まったまま。
誰も新しい電池にしてくれないの。