想うのはあなたひとり―彼岸花―


確かに先ほど弘樹が私の名前を言った。
だがそれは名前だけでフルネームだけではない。




「ははっ驚いた顔してる。俺、なーんでも知ってるよ?クリスタルマンション9階、907号室。名前は花本妃菜子。お父さんと二人暮らし。それから…」




「な…んで?」





皐から飛び出した言葉たちは私の個人情報だった。
何故知っているの?
私がクリスタルマンションの907号室に住んでいるって。


生意気だと思った皐が急に怖くなった。
目を丸くして一歩後退りをする。
その瞬間、弘樹が「妃菜子ちゃん?」と私を呼んだ。



周りの景色が見えなくなる。
見えるのは不気味に笑う皐だけ。




「俺は何でも知っているから。これからよろしくね?」





鼓動が速くなる。
次第に呼吸が上手くできなくなっていく気がした。




あなたは何者?



私の…なに…?




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