想うのはあなたひとり―彼岸花―
それは真っ赤なドレスを着た私だった。
あやつり人形のように釣糸で操られている。
操るのは…神様。
「何か…あったの?」
「そう、当たり。何かあったの。知りたい?」
髪の毛から覗く皐の瞳。
息ができなくなるほど、それは綺麗だった。
「…私…は…」
ちょっと興味がある。
あなたの、裏の顔。
「教えないよ。妃菜子にはね。あ、でも妃菜子の恋人のことを教えてくれたらいいかな」
「…あんたには教えないわ。私のこと。残念ね」
「そっか、それは残念です。帰ろうかな、ここにいても暇なだけだし?」
そう言って歩き出す皐。
近づいてくる影。
思わず影を踏みたくなった。
あなたが教えてくれないのなら、影に聞いたら教えてくれそうだから。
そんな意味のないことやっても無駄よね。
自分で思って思わず笑えてしまう。