想うのはあなたひとり―彼岸花―
「じゃあ、また後でね。妃菜子」
「…え?」
耳を疑った。皐の言葉に。
また後で?どういうこと?
皐は私にそれだけを言い、屋上から姿を消した。
やはり掴めない人だ。
皐が先ほどまでいた場所に散らばる紙くず。
私はそれを一枚拾った。
無惨な姿になった手紙は、皐の心には届かなかった。
あなたは何を隠しているの?
何を思って生きているの?
私と…同類なのかなと思った。
私は鞄の中から椿の手紙を取り出す。
何度も読んだから少しだけしわくちゃになっている。
でもちゃんと伝わってくるんだ。
「椿…私も会いたいよ…。」
青い空を真っ直ぐ見つめる。
羽が生えたらいいのに…と空に向かって願うのだけれど、神様は私が嫌いだから叶えてはくれない。
分かっていたことなのに、何故人は神頼みをしちゃうのかな。