想うのはあなたひとり―彼岸花―


お父さんが作る焼きそばには人参が入っていたから、当たり前だと思っていた。
…違うの?



「初めて見た!焼きそばに人参入れる人!なんか感動!」



笑いながら言う皐に開いた口が塞がらなかった。
焼きそばの具材くらい…個人の自由じゃない。



「うるさい。もういいから、あっち行ってよ」



「ここで会うのは運命かもしれないし?一緒に帰ろ」



レジがある場所へとすたすた歩いていく私。
もちろん皐の話には耳を傾けずに。


ますます分からない、皐の考えているかとが。
いきなり暗い顔をすれば、ころっと明るくなって。


私には皐を理解できない。



会計を済ませ、マンションの道を歩く。
皐はずっと私の後ろをついてくる。


本当のストーカーのよう。
案外私の予想は当たっているかもね。




「ちょっといつまでついてくるわけ?私の家ここだって知ってるでしょ?」




「知ってるよ?クリスタルマンションの907号室。でも俺の家もここなんだよね」



そう言ってマンションを指差す。



心臓が止まるかと思った。




「え…」




「昨日からクリスタルマンション906号室の住人、美波皐です。よろしくね、お隣さん」





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