想うのはあなたひとり―彼岸花―
…何を考えてるの?
あなたの心を覗かせてよ。
私に見せてよ、あなたの全て。興味があるの、あなたの秘密。
「学校も一緒、帰る場所も一緒、部屋は隣同士。これってやっぱり運命?言っただろ?蜜蜂は何度も甘い蜜を吸いにくるって」
「…馬鹿じゃないの…。」
エレベーターのボタンを押して来るのを待った。
体が震えている。背後には皐。何者なのか未だに分からない。
目の前で開くドア。
小さな箱の中に密室状態の男と女。
漂う、皐の香水の匂い。
9階ってこんなにも遠かったっけ…
「ねぇ、あとは何を知っているの?私のこと…」
「ん?あとは…なーんにも。俺が知ってることはそれくらい。ただ妃菜子を驚かせたかっただけ。」
「…良かった。私の過去…知られたくないから。着いたよ」
無事に9階へと辿り着いた。
皐の言ったことは嘘ではなかった。
906号室の鍵を開けていたから。
「じゃあ、また明日。焼きそば上手く作れるといいね。バイバイ」
「ありがと…」
皐は最後に優しく笑った。
私はこの日、皐の秘められた過去を知ることとなる…。