想うのはあなたひとり―彼岸花―


神様はなぜ私と皐を出逢わせたのでしょう。
同じ色の空の下で、心には秘密があって、前に進むことができない弱虫な男女を、なぜ引き合わせたのでしょう。


背中を向き合って生きていれば、私たちは出逢わなかったはずなのに。


神様は何を考えてるのでしょうか。


死ぬか、生きるか。
私と皐にどちらかを選べと命令したのなら、私はどちらを選ぶのかな。


皐は死ぬと言うはず。
そうでしょう?

私は生きると言うわ。
椿と約束したから…


でも…皐。
私はあなたに生きて欲しい。
あたなと出逢ってしまったのだから、あなたをずっと見ているから。


だから、暗い顔…しないで。





…部屋の中に入ると、そこには暗い空間が広がっていた。
カーテンの隙間から覗く、わずかな光だけが、世界の色を表していた。


それを見た瞬間、劣等感に襲われる。



笑っちゃうわ、本当に。



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