想うのはあなたひとり―彼岸花―
一日がこんなにも長いなんて。まだ正午を回ったばかり。
あと何回針が一周したら明日になっているのかな。
がらんとした部屋からは父親の存在が消えていた。
荷物は先に勤務先のロンドンに送られた。
父親は手荷物がなくて楽だと嬉しそうに話していたっけ。
また一人ぼっちか。
父親についていけば良かった?
…それは嫌だ。
椿に会えなくなる…。
スーパーで買った荷物を冷蔵庫の中に入れていく。
冷蔵庫の中は綺麗に片付けられていた。
父親の几帳面な性格が分かる。
こちらを向いて整頓されているビールを見て少しだけ笑えた。
「…あ、そういえば…」
いけない、忘れていた。
焼きそばソースを買うのを忘れていた。
あと普通のソースも。
無くなったとこの前お父さんが言っていたのを今思い出した。
ねぇ、神様。
きっかけを作ったのはあなたでしょう?