想うのはあなたひとり―彼岸花―
皐の魔法?
魔法をつまらないことに使ってはダメだよ。
でも…なんか心が軽くなる気がするんだ。
「しょうがないなぁ…って妃菜子、材料の袋なんか持っちゃってさ?もしかして俺のとこで作る気満々だったんだろ?」
あ、バレちゃいました?
その通りです。
私は袋をぎゅっと握って皐に押し付けた。
そう言われたら急に恥ずかしくなったの。
心を読まれた気がして。
「…美味しく作って。私、料理苦手なの」
「あはは、なんだそれ」
そう言って私が渡した袋を受け取る皐。
私は踏み込んでしまった。
あなたの…秘密の中に。
…同じマンションだからだろうか。
やはり部屋の作りは同じだった。
だけど匂いも雰囲気も違う。
思いきり、男の子の部屋だった。
今気付いた。
私…男の子の部屋に入るの初めてだ。