想うのはあなたひとり―彼岸花―


そういえば椿の部屋に入ったことがない。


ごめんね、椿。
怒らないで。
理由をちゃんと言うから信じてね。



スカイブルーのカーテンはまるで海の中にいるような錯覚になる。
青色のソファー。
32インチの薄型液晶テレビ。透明な猫足テーブル。
その上には煙草の吸い殻で溢れ返って灰皿があった。

皐…煙草吸うんだ。




「適当に座ってて。勝手に作るから」




「手伝おうか?」




「いらない。妃菜子にやらせたら酷くなりそうだから」




…いちいちうるさい。
そんなこと言わなくてもいいのに。



ソファーに無惨に置かれている制服。
脱ぎ捨てただけと主張している。
私はそれを手に取って無意識に畳んでいた。




「皐は…青色が好きなのね…」




「…別に?本当は黒が好き。でも黒って色じゃない気がするから青を好きになろうとしてるだけ。それに…昔、青色が似合うって言われたから」




「ふーん…誰に?」





ねぇ、あなたの汚れた心を快晴にするにはどうすればいい?




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