想うのはあなたひとり―彼岸花―

「妃菜子、ちょっと味濃くなっちゃったけど大丈夫？」



こっち向いてよ。
この写真を突き出してやるから。



「…ねぇ、どうして私に近づくの？」




カチ…と時計の針が１２をさした。
針は一周し、またゼロからのスタートになる。
私に教えてよ。
でも私のことは教えないよ。



「いきなり何言い出すんだよ？」




「この子…誰？」




皐に近づいて写真を差し出す。その瞬間を見逃さなかった。
フライパンを持つ皐の手に少しだけ力が入ったのを。
そして目を丸くして表情を固まらせていた。


何かあるようね。
やっぱり、当たっていた。



「妃菜子…見たの？」



震える声で皐はゆっくりと私の瞳を見た。
皐は私を真っ直ぐ見つめるものだから、私も真っ直ぐ皐を見つめた。




「勝手に見たことなら謝る。…私にそっくりね、この子。怖いくらい似てる。皐の彼女？」





ねぇ、私おかしいの。



すごく…苛々するの。