想うのはあなたひとり―彼岸花―
ぱりん、と心のガラスを割られたような衝撃だった。
物静かな部屋に響いたのは、私と皐の心臓の音だけ。
生きているという証だけだった。
「…え…」
小さく声を漏らし、皐を見る。皐が言ったことはどうやら冗談ではないらしい。
彼の横顔がそう語っていた。
「…嘘だよ、びっくりした?こんな冗談信じんなよ」
「…え…?」
先ほどと言っている言葉は同じなのだが意味が違う。
どういうこと?
何が本当で何が冗談?
「妃菜子には話さないよ。話したらアイツに聞こえてそうだから。多分アイツは俺が一生一人で生きて欲しいって願ってるから。だから言わない。」
「アイツってこの子のこと?言わない理由は…私と顔が似てるから?」
そうなんでしょ?
ほら、また手が止まった。
箸を持つ手が一瞬止まったのをちゃんと見ていたよ?
あなたの癖のようね。
私の存在は無視なの?