想うのはあなたひとり―彼岸花―
切るのは簡単だった。
大きく息を吸って力を入れて切るだけ。
簡単に切れた髪の毛は、私の足元をぱらぱらと散っていった。まるで桜の花びらが息絶えるように。
「私はこの子じゃないわ。これでもう似てないでしょ?」
静かに呼吸をする。
右手にはハサミ。
左手には無惨な髪の毛。
さよなら、髪の毛さん。
今までありがとう。
「な…にやってんだよ!!」
慌てて近づいてくる皐。
私の右腕を掴み、ハサミを床に投げつけた。
「こうすれば皐の心に光を与えられると思ったからしただけよ。」
「お前…馬鹿じゃないの?なんで…こんなことするんだよ!俺のことなんてお前に簡単ないだろ?関わるなよ…、これ以上…。俺は思い出したくもないのに…」
だんだんと小さくなっていく皐の声。
皐は下を向き、拳を作り一生懸命立っていた。
泣いていたとあとから気付いたんだ。