想うのはあなたひとり―彼岸花―
がたん、ごとん。
気づいたら私はここにいた。
緑色の椅子に座っていた。
聞こえるのはイヤホンから流れるお気に入りのアーティストの曲。
彼たちの曲を何度もリピートする。
曲のテーマは“生”
私にぴったりな曲だと思う。
フレーズはすごくありきたりなのだが、ストレートに書いてある分、伝わり易くなっている。
私の応援歌。
何回も聴いても飽きない。
私は皐の過去を軽く触れた次の日、椿に会いに行った。
助けてくれるのではないかと思って。
だめだよね、私。
椿に頼りすぎているよね。
椿のいる少年院は、電車とバスを乗り継いで2時間弱の場所にある。
海が近い街だ。
椿は海や河が好きだった。
だから居心地はいいよね…
待っていてね、椿。
この日はあの事件のときのように濁った空だった。
まるで神様が私が椿に会いに行くのが嫌がっているようだった。