花の都
両親のない千種にとって、何よりも大切な形見だった。今、それが無惨な姿になって出てきた。
「…ふっ、う…。ど、して…」
辛くて、悲しくて。
信じていたものが、崩れ去っていった。
その日、夜が更けるまで千種の泣き声が響いていた。
翌朝、村から千種の姿が消えていた。
しかし、村人たちはあえて探そうとはしなかった。
一方。
千種は、村から東へと向かう街道にいた。アンシャンテは大陸の西端に位置するため、どこへ行くのにもまず、東へ行かなければならなかった。
「さて、と。どうしようかな」
目の前には、何処までも続く草原。その中を縫うように白い街道が伸びる。
空は青く蒼く輝き、千種の旅立ちを祝福していた。
もっとも、今の千種に風景を楽しむだけの心の余裕はなかったが。
まっすぐ前を向いて歩き出す。決して振り返らないように、未来を見据えて。
しばらくあるくと、遠方に涼しげな木陰を発見した。
当面の目的地を決めるため、千種は少し休憩をとることにした。
千種の旅は目的地もなく、帰るあてすらない流浪の旅。一応の名目として、村長は巡礼の旅と言っていた。
ただし、それは暗に追放も示すものでしかない。
千種の旅に目的などなく、ただただ街道だけが何処までも伸びていた。
(本当にどうしよう)
村を出て、やりたいことも特にはない。むしろ千種は静かに平凡に暮らすことを望んできた。
「…考えていても、答えはでない、か」
とりあえずは名目通り、巡礼の旅でもしてみよう。
そう決めた。
ならば最初に目指すは、ここから最も近い西の大神殿。
…とはいえ、徒歩で何日もかかる距離がある。
今日のところは、アンシャンテから一番近い宿場まで進むことにした。
「…ふっ、う…。ど、して…」
辛くて、悲しくて。
信じていたものが、崩れ去っていった。
その日、夜が更けるまで千種の泣き声が響いていた。
翌朝、村から千種の姿が消えていた。
しかし、村人たちはあえて探そうとはしなかった。
一方。
千種は、村から東へと向かう街道にいた。アンシャンテは大陸の西端に位置するため、どこへ行くのにもまず、東へ行かなければならなかった。
「さて、と。どうしようかな」
目の前には、何処までも続く草原。その中を縫うように白い街道が伸びる。
空は青く蒼く輝き、千種の旅立ちを祝福していた。
もっとも、今の千種に風景を楽しむだけの心の余裕はなかったが。
まっすぐ前を向いて歩き出す。決して振り返らないように、未来を見据えて。
しばらくあるくと、遠方に涼しげな木陰を発見した。
当面の目的地を決めるため、千種は少し休憩をとることにした。
千種の旅は目的地もなく、帰るあてすらない流浪の旅。一応の名目として、村長は巡礼の旅と言っていた。
ただし、それは暗に追放も示すものでしかない。
千種の旅に目的などなく、ただただ街道だけが何処までも伸びていた。
(本当にどうしよう)
村を出て、やりたいことも特にはない。むしろ千種は静かに平凡に暮らすことを望んできた。
「…考えていても、答えはでない、か」
とりあえずは名目通り、巡礼の旅でもしてみよう。
そう決めた。
ならば最初に目指すは、ここから最も近い西の大神殿。
…とはいえ、徒歩で何日もかかる距離がある。
今日のところは、アンシャンテから一番近い宿場まで進むことにした。