planetarium antique
Ⅰ 夢の始まり
――時は、明治十七年。
街中の大通りを通る馬車の中では、身分の高い公爵や貴婦人が談笑している姿が見受けられる。
街並みはまだ江戸期の風情を残しているが、道行く人々の髪型は変わり、そこからは新しい時代の香りが漂っていた。
まだ西欧風の建築物などがあまり見られないのにもかかわらず、一際大きく豪華な西欧風の屋敷が、東京の街中にそびえ立つ。
屋敷には中庭があり、周囲は大きな塀で囲まれている。宮殿かと見間違うこの屋敷には、『黒羽』という表札が掲げられていた。