planetarium antique
まだ日も高い頃、屋敷の台所脇にある裏口では、カチャカチャと聞き慣れない金属音が響いていた。
それは、扉にしっかりと掛けられた南京錠を開けようとする音。
そして、それをしている人影は、至極可憐な少女のものであった。その美しい少女は、どうやら焦っているように見える。
「もう、どうして今日限って上手くいかないのかしら!」
少女が焦っているのには、理由があった。
「…待ち合わせに遅れてしまうわ!」
少女は人と会う約束を交わしていた。その"人"の名前は、白崎 隆一(シロサキリュウイチ)という。
幼い頃からの少女の幼なじみであり、現在は恋仲にある青年。しかし、訳あって少女との交際は秘密にしていた。
―――と、そのとき
少女は、背後に人の気配を感じ取った。その愛らしい黒い瞳を、後ろに立っている人物へとおそるおそる向ける。