planetarium antique
 


 下から自分を見上げる可愛らしい瞳に、結崎の頬がほんのり薄紅に染まった。その視線を前にすると、結崎の決心がいとも簡単に崩れてしまう。

 そして、また小さくため息をついた後、優しげな眼差しを侑貴に向け、柔らかく微笑みかけた。


「今回で、最後ですよ?」


 その言葉が発せられた瞬間、侑貴の顔がパッと明るくなる。

 嬉しさがにじみ出ている令嬢を見て、結崎は複雑な心境だったが、内心はそうでもないようだった。



―――カチャ、



 結崎がそっと胸ポケットから鍵をとり、鍵穴に差し込む。すると、鍵は音を立ててはずれ、裏口の戸がかすかに開いた。

 侑貴はその戸に、嬉しそうに手をかけて美しい執事に笑顔を向けた。


「ありがとう、薫!行ってくるわね!」

「はい。夜食までには、お戻りになって下さいね」


 満面の笑みを浮かべて、屋敷の外へと飛び立ってしまった少女。

 次第に見えなくなる彼女の後ろ姿を、執事は暖かい眼差しと共に、複雑な心境で見送っていたのだった。

 
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