planetarium antique
塀の外は、屋敷の中とは違って開放感で満ち溢れている。塀で囲まれた敷地内での生活は、窮屈以外の何物でもなかった。
たまに屋敷を抜け出して、幼なじみの隆一と会うことが侑貴の密かな楽しみになっていた。
人通りが多い街道から一歩外れれば、そこには静かな町並みがある。その中に、白崎隆一の家が佇んでいた。
隆一の家は、この辺では少しばかり有名な家だった。いわゆる庄屋というもので、この辺りを束ねる家柄である。
「隆一!」
その家の前で彼女を待ってる影が見える。
すらりとした体型だが、肩幅が広くて男らしい。それでいて、群青色の着物に短い髪が似合っていた。
優しい雰囲気の持ち主の彼は、待ちわびた彼女の登場に笑顔を零す。
「侑貴!遅かったね、また抜け出したの?」
「…ええ、なかなか外出の許可がもらえないくて。でも、遅れてしまってごめんなさい」
「いや、遅くなった理由が怪我でなくて良かったよ」
侑貴を優しく包み込むような笑顔が、幼い頃から侑貴はずっと好きだった。
それに加えて、隆一の性格も、侑貴にしてみれば恥ずかしいものだが、嬉しいものだった。
何か用事があったとしても、侑貴に関する事柄は常に優先順位を一番にしていた。その性格も昔から変わっていない。