planetarium antique
そして、二人はいつもの場所へと移動する。昔から一緒に遊んだり話したりした、近くの川沿いの土手。
そこは淡い黄緑色の草が広がり、ちらほらと見える黄色のタンポポが春の訪れを語っていた。
「…で、どうして今日呼び出したの?」
「ちょうどいい物見つけてさ。侑貴に渡したくて」
そう言うと、隆一は恥ずかしそうに微笑んで着物の袖に手を入れて何かを取り出す。シャラ、と微かに金属がかすれる音がした。
それを侑貴の右手にそっと預けて、またさっきのように優しく微笑む。
「それ、店で偶然見つけたんだ。その石、黒いけど…こう光に当てると、色が変わって見えるんだ。綺麗だろ?」
「本当…とても綺麗!素敵ね!隆一ありがとう!」
渡したものは、黒い石の首飾りだった。隆一はにっこりと微笑みながら、それを侑貴の首にそっと付ける。
予想だにしなかった展開に、侑貴は嬉しさを隠せないでいた。また、隆一も侑貴に気に入ってもらえてご機嫌だった。
幸せそうな二人の横を、暖かい柔らかな風が吹き抜けてゆく。そうして、幸せな時間は早くも過ぎ去ってしまうのだった。