窓に影
さっきの話を蒸し返す歩。
私は観念して答えた。
「謹んでお受けしようと思っておりますが」
聞きながらコーラをグビグビ飲んだ歩は、ぷはっと息を漏らした。
風呂上がりの一杯ってやつか?
しっとり濡れた髪と飲み込む度に動く喉仏が色っぽい。
「そっか」
コトッと小さなテーブルに缶を置いて、後ろに手をつく歩。
「呼び出したからにはもっと何かコメントしてよ」
「そうだよなぁ」
どうやら思いつかないらしい。
私は膝を抱えて、さっきから視線を合わせない歩を観察した。
「恵里」
「なによ?」
「あの日のこと、聞きたい?」
視線を会わさぬまま、低い声で問われる。
「あの日ってどの日よ?」
「クリスマス。本当のこと、聞きたい?」
そこで視線が帰ってきて、ドキリとする。