窓に影

 あれ、まだ帰ってないのかな?

 結露して濡れている窓を少しだけ――ほんの5センチくらい開けてみた。

 風の音と共に歩の話し声が聞こえた。

 ここからじゃ姿は見えないが、どうやらまだ外にいるらしい。

「うん、家庭教師だよ」

 耳を澄ますと会話の内容がハッキリと聞こえた。

 きっと電話だ。

「女の子だけど、大丈夫だよ。隣の家の幼馴染なんだ」

 くっ、会話の内容的に彼女じゃん。

「平気平気。小さい頃から一緒にいるから、もうそういう対象外だしさ」

 なにぃ?

 何の対象外だってぇ?

 歩のくせに、あたしを弾くわけ?

「知ってるだろ? 俺、バカな女、嫌いだし」

 ズキーン……。

 胸が痛み、そのまま静かに窓を閉めた。

 バカな女は嫌い、だって。

 何それ。

 あたしのこと、やっぱバカにしてるんだ。

 嫌いなんて言われると幼馴染としてショックだよ……。

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