窓に影

 周りはカップルだらけで、まるで恋人たちの巣。

 風が強く、地上よりも何度か冷えているが、それも気にならないほどのラブラブぶりを発揮しているカップルも多い。

「来てよかったでしょ?」

「ハイ!」

 勢いよく返事をした悠晴。

 私の手を引っ張って、

「あっちにも行ってみよう」

 と色んな方角にズルズル連れて行かれた。

 夜景が見えたり、星が見えたり、ここに集うのがよくわかる。

 歩のやつ、いつもこんなロマンチックなことしてるんだ。

 響子さんを手放さない理由が、少し実感できた。

「ハーックショイ!」

 冷たい風に当たったからか、くしゃみが出る。

「だっせーくしゃみだな」

 歩にツッコまれ、他の二人が笑う。

「これ巻いとけよ」

 悠晴が自分のマフラーを私に巻いてくれた。

「よし、風邪ひく前に帰ろう」

 響子さんの号令で、車へと戻る。

 そして山を下りた。

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