窓に影
先に悠晴を下ろし、私と歩の家の前で車を降りる。
「ありがとうございました」
「いえいえ。またね」
キレイな笑顔で、響子さんは去っていった。
未知の世界へ連れて行ってくれる響子さん。
今となっては私にとっても魅力的だ。
「歩」
「ん?」
「あたし、歩が響子さんと別れたくない理由、わかった気がする」
私の発言に首を傾げている歩へ手を振り、
「じゃあね。また火曜日」
そそくさと家に入った。
首にマフラー、右胸に跡。
私は悠晴の彼女だと、自分に言い聞かせる。
しかし悠晴の残した跡は、二日後の火曜日にはキレイに消えてしまっていた。