窓に影

 とは言ったものの、そう言われると意識してしまう。

 私は「万が一のため」、風呂に入って西山家へと向かった。

 すると……

「おっす」

 玄関で出迎えてくれた歩も、風呂上りだった。

 半乾きの髪に、メガネ……あの夜を思い出してしまう。

 ああ、悠晴……私、裏切っちゃうかも……。

 なんてハラハラしてしまったのも束の間。

 歩がにっこり笑って言った。

「今日は特別講師をお招きしております」

「は?」

 トントンと階段を下りる音がした方に目を向けると、

「こんばんは」

 バッチリ化粧をしている響子さんがそこにいた。

「響子さん!」

 覚悟をして損した気がする。

「響子さんは、今でも塾で英語の講師をやってるんだ」

 なるほど。特別講師ね。

 試験は数学だけじゃないから、心強い。

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