窓に影
一応テスト範囲の教材を全て持って来ていて良かった。
歩、何も言ってくれなかったから、危うく取りに帰らなきゃいけないとこだった。
隣だけど、二度手間になると面倒だし。
今日は私がテーブルに、歩が机に座る。
私の向かいに、響子さんが座る。
この部屋にいると、罪悪感がジリジリと胸を刺激する。
それを追い出すように、ガリガリと問題を解いた。
英語はさほど苦手ではないが、この際わからないところは聞きまくってやろう。
「あの、響子さん」
「なあに?」
うっ……。キレイだ。
「この問題なんですけど、どうしてここの動詞は原形なんですか?」
「これはね、shouldが省略されてて……」
響子さんの指導は優しくて、わかりやすい。
さすが現役塾講師だ。
「響子さーん、この問題、どうして過去完了形になるか教えて」
めったに見れない歩の生徒姿。
……質問のレベルが違う。