窓に影

 あたしにだって、彼氏がいるんだから。

 癒してくれる存在がいるんだから――。

 カーテンを少しめくる。

 歩が勉強をしていれば見えるはずの位置に、影はない。

 めくってすぐに、明かりがワントーン暗くなった。

 その先に想像出来ることは……。

「ねえ、会いたい」

「俺だって会いたいよ」

「明日、会える?」

「会えるけど、勉強は? いいの?」

 カーテンを手放し、窓に背を向ける。

「あのね、いい方法思いついたの」



 翌日、いつもの時間に歩がやってきた。

 歩は風呂上りのようだが、私はまだ制服だ。

 玄関に入るなり、歩はピクッと何かを感じ取ったようだ。

「何か嫌な予感がする……」

 視線を追うと、並べられている男物の靴にたどり着いた。

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