窓に影
10・お返し
テストが終わって、三年生を送り出し、最近暖かくなったねという会話が飛び交う3月上旬。
「進級決定おめでとう」
北高では成績優秀な聡美が、やや皮肉気味に祝いの言葉をくれた。
「あれだけ勉強させられりゃ点数も取れるっつーの」
私は数学で、高校に入って最高の68点を獲得。
無事に三年生に上がれることになった。
歩にメールで伝えると、
〈よかったじゃん〉
短い返事が返ってきた。
一安心。
勉強した甲斐があった。
鬼教師の呪縛から逃れた私は、今日も街へ。
悠晴と待ち合わせだ。
「おめでとう! これで進級できてなかったら、あの幼馴染をどうしてやろうか考えてたんだ」
八重歯の彼は、今日も子供のように笑っている。
手を繋いで街を歩くと、文房具店には新入学フェアの看板が出ているし、服屋のディスプレイはスーツが多い。
まだ別れの3月なのに、街はいつも気が早い。