窓に影
慰めろってことは、嫌なことがあったんだろう。
歩を苦しめているそれが妬ましい。
でも悠晴の顔がチラついて、すごくいけないことをしているような気になった。
自分は彼に、もっと大きな裏切り行為をさせておきながら。
「歩……?」
「全部俺のせいにしろよ」
喉仏が動き、低くて色気のある声で囁かれる。
「は?」
「お前は何も悪くないから、全部俺のせいにしていいから。今は何も聞かずにこうしててよ」
「ちょっと、何言って……んっ」
顔を上げた瞬間に、重ねられた唇。
なるほど……。
この状況の罪を、歩のせいにしろと言っているのか。
顔が少し離れて目を開けると、歩はあの夜のような怖いくらい色気のある表情になっていた。
「安心しろ。今日は、チューしかしない」
「はぁ?」
今日はってことは、今度があるということだ。