窓に影

 隙をつかれて枕を奪われると、ポイっと放られた。

 歩は私の両頬を押さえて再度キスをすると、勢いよく立ち上がった。

「よし、何か気合い入った。続きやるぞ」

「えっ?」

 ドキッとして歩を見上げると、軽くデコピンをかまされる。

「何期待してんだよ。数学の続きだっつーの」

 何だ、数学か。

 安心。でもちょっと残念。

 私も起き上がり、所定の位置につく。

 そして再度、ペンを握った。

「あ、恵里。そういえばさ」

「ん?」

「約束してた進級のお祝いと、バレンタインのお返し、楽しみにしとけ」

 そうだった。

 すっかり忘れてたけど、進級が決まったら何かくれるって言ってたんだ。

「ああ、そうだったね」

「忘れてたの? じゃあやんねー」

「ケチくさいな。女には金も労力も惜しまないんじゃなかったの?」

「女の意味が違うだろ」

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