窓に影

 中学時代にとどまらず、幼少時代の歩まで。

 嫌い。

 大嫌い。

 心いっぱいにそう思いながら、吐き出しては聡美と笑い合った。

 あんたがあたしを嫌ってるように、あたしもあんたを嫌ってるんだから――。

 悪口は盛り上がりの最高潮を迎えていたころ、突然聡美が冷静になった。

「でもさぁ」

 声のトーンの落ち具合に、自分の熱まで冷める。

「ちょっとドキッてしちゃったんでしょ?」

 ギクッ……。

 リアルに頭の中で音がした。

「ま、まさか。小さい時から地味なあいつを知ってるんだし」

 努めて笑顔は絶やさない。

「そう」

 半笑いの聡美が急に憎たらしく感じた。

 認めたら自分が惨めじゃない。

 歩は私を嫌っているのに、私は歩に好意を抱いたなんて。


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