窓に影
ピアスに気付いてくれていたこと、そして着ける部分に気を使ってくれたことが嬉しくて、自然にありがとうと言えた。
「そりゃよかった」
わざと変な顔をして言う歩は、きっと照れているんだと思う。
嬉しい。嬉しくて叫びだしたいくらい。
本当に叫ぶわけにもいかないから、フッとそれを気合に変えた。
「歩。あたし今すごくやる気出たから、今のうちに授業始めて」
「やる気? 珍しいこともあるもんだな」
「あんたに珍しいことされちゃったからね」
そのピアスを着けたまま、日曜日のホワイトデー当日。
今日は悠晴がうちへ出向いてくれた。
「はい。これ、お返し」
「わぁ。ありがとう」
悠晴のお返しは、ネックレスだった。
ちょこんと小さめのモチーフが付いており、可愛らしい。
「着けてあげる」
一回キスをして首へ手を回した彼は、私の変化に気付いたらしい。
「あれ? ピアス、開けたの?」