窓に影

 左耳の軟骨の穴に、彼は気付いていなかった。

 まあ、気付かないのが普通だと思うけど。

「ううん。ずっと着けてなかったんだけど、最近また着けてみたんだ」

「へえ。軟骨のピアスって、なんか良いね」

 ズキッと胸を刺激する罪悪感。

 彼が離れると、首にはネックレスがしっかりとかけられている。

「ピアスもネックレスも似合うよ。飾り甲斐あるね」

「何よそれ、飾らないと地味ってこと?」

「あはは、そんなことないって」

 今日も悠晴は八重歯を見せて幸せそうに笑う。

 そんな彼を見ていると、このピアスを着け始めた経緯なんて絶対に話しちゃいけないと思った。





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