窓に影

 思えば先月くらいからおかしかった。

 何か言おうとしてやめたりもしてたっけ。

 それが原因じゃなかろうか……。

「ねえ、言いたいことがあるなら言ってみれば?」

「別にないけど」

 歩は紅茶に砂糖を入れて、くるくるとかき回していた。

「じゃあ何で最近そんなソワソワしてんの?」

 質問には答えず、紅茶を飲む。

 無視すんなよ。腹立つなぁ。

 諦めて母が作ったカップケーキを頬張った。

「恵里」

「何よ」

 カチャ

 カップを置く音が、嫌に響く。

「俺のためだと思って、頼み聞いてくれる?」

 表情が切ない。

 声が低い。

「内容による」


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