窓に影
歩は立ち上がり、ベッドの上であぐらをかいて座った。
「ここ、来て」
ぽんぽん、とベッドを手でたたいている。
「はぁ?」
意味もわからず、私は歩と一歩離れた場所に座った。
お互いあぐらをかいた状態で向き合っている。
「後ろ向いて」
お尻を軸にして、腕の力で後ろを向いた。
何、この状況。
どう見ても変でしょ。
そう思ってたら、ぐいっと後ろに引き寄せられた。
右肩に歩の顎が乗る。
「ちょっと、何よ?」
歩の足の間で、後ろから抱きしめられているようだ。
彼氏がいながら抵抗できない自分が恨めしい。
低い声が耳元で響いた。
「癒される」
「お願いって、これ?」
顔は右肩のまま、歩は首を横に振った。
「これ、も」
まだあるの……?