窓に影

 肩に乗せられていた顔が傾き、そのまま首に唇が這う。

 感覚はゾクゾクと全身に広がる。

「ちょっと、やめて……」

 少しもがいて開放されたと思ったら、そのまま歩に組み敷かれた。

 下から見えた歩の表情。

 覚えがある。

 メガネを床に放った時の顔だ――。

「全部、俺のせいだから」

 そう言って歩の顔が私の顔と重なる。

 その言い方、ずるい。

 彼氏がいても、私は悪くないんだよって、逃げ道を作っている。

 自分だって響子さんがいるくせに。

 浮気野郎。

 次第に唇は下がっていった。

「ダメ。あんた、本気……?」

 両手で顔を押さえると、歩の顔が上に戻ってきた。

 本当にどうしちゃったの?

「本当に嫌なら殴るなり蹴るなりして拒否しろよ。泣きながら止めてって言えよ」

 歩の苦しそうな顔を見ると、涙が滲んできた。


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