窓に影

「なんだ。この間貸したマンガみたいな展開を期待したのに」

 縁起でもないことをポロリと吐き捨てて、聡美は自分の席へと戻っていった。

 私が歩と……なんて、鳥肌が立つ。

 歩には彼女がいるし、私だってタイプじゃないし。

 大体、彼女も彼女だ。

 見る目がないと言いつけてやりたい。

 心の中で悪態付くが、それでも「嫌い」と言われた傷は少しも癒えなかった。



 驚いたことが起こった。

 嫌いついでに次の火曜日にでもとことんケチを付けてやろうと思っていたのだが、今日の授業の内容が……わかる。

 この私の頭で、数学を理解している。

 何をやっているかさえさっぱりわからなかった私は、歩に一つ先の内容まで叩き込まれていたことに気付かなかった。

 ちくしょう。

 歩の手のひらで転がされた気がして、悔しい。

 だけど数学の問題が解けるって、快感。

 家庭教師は無駄じゃなかったということか。

 なんだ、あたし、やればできる子かも。


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