窓に影

 殴るなんて、できない。

 蹴るなんて、できない。

 きっと本心で拒否してない。

「できないよ……」

「じゃあ、続ける」

 言葉にできず、顔を横に振った。

 でもそれを止められて、強引に口付けられる。

 長いキスから開放されると、低く呟いた。

「俺おかしくなりそうなんだよ」

「もう十分おかしい」

「そうだよな」

 嘲笑し、体を起こした。

「彼氏が好きなら……俺のこと思いっきり振って」

 さっきまで頭がいっぱいいっぱいで気付かなかったけど、心臓がドックンドックン鳴っている。

「意味わかんない」

 つい出てしまうこの言葉。

 でも本当に意味がわからないのだ。

「じゃあちゃんと説明してやるよ」

 私も体を起こそうとすると、歩が手伝ってくれた。

「俺、お前のこと本気で口説く」

「は……?」

「響子さんとは、別れた」

 衝撃に、視界が揺れた。

 
< 200 / 264 >

この作品をシェア

pagetop