窓に影
殴るなんて、できない。
蹴るなんて、できない。
きっと本心で拒否してない。
「できないよ……」
「じゃあ、続ける」
言葉にできず、顔を横に振った。
でもそれを止められて、強引に口付けられる。
長いキスから開放されると、低く呟いた。
「俺おかしくなりそうなんだよ」
「もう十分おかしい」
「そうだよな」
嘲笑し、体を起こした。
「彼氏が好きなら……俺のこと思いっきり振って」
さっきまで頭がいっぱいいっぱいで気付かなかったけど、心臓がドックンドックン鳴っている。
「意味わかんない」
つい出てしまうこの言葉。
でも本当に意味がわからないのだ。
「じゃあちゃんと説明してやるよ」
私も体を起こそうとすると、歩が手伝ってくれた。
「俺、お前のこと本気で口説く」
「は……?」
「響子さんとは、別れた」
衝撃に、視界が揺れた。