窓に影

 私は歩の浮気心に一晩だけ付き合って、歩と響子さんのために諦めた。

 歩が私を選ばなかった。

 次に進みたくて、悠晴と付き合い始めた。

 悠晴のことは好きだし、それなりに責任を持っているつもり。

 たまに歩に流されることはあっても、歩と同じ罪を背負うならと思って受け入れてきた。

 なのに……今更。

 しかも響子さんの代わりなんて。

「恵里、違うんだ」

「違わないじゃない」

「違うよ。いいから、聞いて」

「聞きたくない。もう帰って!」

「聞けって」

「帰れバカヤロー!」

 ボロボロ泣き出した私に、歩が手を差し伸べる。

 私はその手を思いっきりはらって拒否をした。

 ため息が聞こえたが、もう歩の顔なんて見たくもなかった。

「俺は諦めないよ」

 そう言って歩は部屋から出て行った。

 母の作ったカップケーキを、一口も食べないまま。


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