窓に影

 部屋に、一人。

 寝転がると、歩が座っていた場所が暖かい。

 歩に触れられた部分はもっと暖かい。

 別れたなんて、知りたくなかった。

 本当は反省している。

 響子さんの代わりじゃない!

 こんなことを、私に言う資格はなかった。

 考えてみれば、私だって悠晴を歩の代わりにしてしまっている。

 だから尚更……ここで歩に靡いてはいけないと思う。

 悔しいやら腹が立つやら申し訳ないやらで、涙は暫く止まる気配がない。

 ああ、来週の家庭教師、嫌だな。

 来て欲しくないな。

 でも、サボったってきっと歩は何度でもうちに来る。

 逃げることもできない。

 だったら、歩に言われたとおり、思いっきり振ってみるか。

 しかし歩への未練が拭えない私に、それができるだろうか……。

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