窓に影
それからの私は、悠晴のバイトがない日は毎日一緒にいるように努めた。
事態が急に動きすぎて、できることはこれくらいだった。
「どうしたの? 最近やけに寂しがり屋だね」
私の心境に変化があったことは、なんとなく悠晴に伝わっているようだ。
やましいことがあるだけに、本当のことは言えない。
「バイトがない日くらい、構ってもらいたいもん」
「はは、そっか」
街の並木通りでは、満開に咲いていた桜がひらひらと降ってくる。
葉を見せ始め、後はもう散るだけ。
嬉しそうに八重歯を見せる彼といると安心する。
手を繋ぎ、ぴったりくっついて歩く。
歩が入ってくる隙間なんて、どこにもできないように。
ある日、珍しく悠晴が真面目な顔をしていた。
「恵里、何か不安に思ってるんだったらちゃんと言って」
私の態度の変化に、不安を募らせたらしい。
「何でもないよ。会いたいだけ」