窓に影
「あんたたち、いつもそんな会話してんの?」
冷ややかな聡美の声が聞こえて、私と歩は言い争いをやめた。
気付けば下校中の生徒も、クスクス笑っているような……。
「あたし、もっと色気のある話をしてると思ってた」
渋い顔をして頬をポリポリ掻いている聡美。
「ほんと、恵里といるとバカがうつるよ」
「はぁ? 人のせいにしないでよね」
しまった。
歩の挑発に乗ってしまうと、同じことを繰り返してしまうとわかっていたのに。
それでも歩からの言葉を待ってみたが、歩の視線は聡美に向けられていた。
「じゃあこいつ、逃げる前に連れて帰るから」
「どうぞ。赤点取らせないように頑張ってよ」
「おう、じゃあな」
そしてそのまま手を振って、聡美は行ってしまった。
「ほら、帰るぞ」
手首を引かれ、歩き出す。
「やめてよっ」
歩の手から、自分の手を抜き取った。
彼はそれを馬鹿にするように笑う。