窓に影

 憎たらしさは三割増し。

 こいつ、本当に私のことを好きなのだろうか。

 それからバスを降りるまでの15分間、歩とは一言も話さないようにした。

「じゃ、いつもの時間に行くから。逃げんなよ」

「はいはい。わかってますよ」

 歩は私が家に入るまで、腕を組んで私を眺めていた。

 そして、7時。

 歩は何食わぬ顔をして、私の部屋へと入る。

 先週のこともあり、私は自然と身が硬くなった。

 警戒していることは、念のために顔にも出しておく。

 それを見た歩はフッと嫌な感じで笑った。

「先週のこと反省してるから、今日は何もしないよ」

 淡々と言って、いつもの場所に腰を下ろす。

 私も恐る恐る椅子に座った。



 本当に反省したのだろうか。

 勉強の間、意味不明な行動もしなかったし、手を出されることもなかった。

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