窓に影

「二人とも、時間よ」

 母の入室により、今日も時間が来たことを知らされる。

 一発伸びをかましてテーブルへ移動すると、母が私たちを眺めて言った。

「あんたたち、何かあったの?」

 無意識に歩を見てしまった。

 それは歩も同じだったようだ。

「どうして?」

「雰囲気かしらねぇ」

 滲み出ているのだろうか。

 母に感づかれてしまうとは……。

「はは、数学も難しくなってるからね。恵里も頑張ってるし、疲れてるのかも」

 爽やかな笑顔で嘘とも真実とも取れる回答をする歩。

 あっさり騙された母は、感心ねと言って部屋から出ていった。

 再び二人になった部屋。

 歩はコーヒーをブラックのまま一口すする。

「恵里」

「何よ?」

「俺のこと振らないの?」

 パサッ

 動揺した私は、スティックシュガーを袋ごとコーヒーに落としてしまった。

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