窓に影
12・彼女の行方
二年ぶりに歩と顔を合わせた聡美のコメント。
「まさかあんなにイイ男になってるとはね。もう地味山なんて呼ぶのやめた。恵里が好きになってしまうのも、納得」
想定外の変貌振りに、地味山という裏のあだ名はなくなった。
「いいよあんなやつ、地味山で」
半ば投げやりにそう返すと、聡美はまた私の心理を解きほぐす。
「でもキッパリ振れないんでしょ? 西山のこと。ズルい女だよ、あんたは」
何も言い返せない。
ムシが良いのは私も同じだ。
悠晴と別れる気はない。
でも歩に諦めて欲しくもない。
考えてみれば、少し前の歩と似たような状態。
そう思い始めてから、歩に意地を張るのが忍びなくなっていた。
歩の作戦なのか、マメにメールが来たりはしない。
口説くと言った割に、それからは大して何もされていなかったりする。
やっぱりからかっただけなのだろうか。
机に伏せると、軟骨のピアスがカチリと鳴った。