窓に影
「あー。そうじゃないだろ。この場合、xに代入するのはさっきの式」
「そうだっけ?」
「恵里、先週俺の話聞いてた?」
「聞いてたつもり」
歩のこととか悠晴のことで頭がいっぱいで、はっきり言って勉強なんてどうでも良かったし。
歩の声はちゃんと聞いてたけど、身に付いていなかったようだ。
「つもり?」
「だって色々考えることとかあって……」
しまった。
ついつい口に出してしまった。
「考えること?」
「あ、いや。進路のこととか?」
すると歩はバカにしたように笑った。
「進路よりもまずは卒業だろ」
「……おっしゃるとおりで」
卒業、か。
髪で隠しているけど、左耳の卒業の印、気付いてる?
歩が私から卒業するように、私もあんたから卒業した……つもり。